飲食店のヴィーガン対応について|対応方法やポイントを解説
近年、健康や環境に対する意識が高まるにつれて、ヴィーガンやベジタリアンに関心を持つ人が増えています。普段肉や魚を食べている人でも意識的に野菜を摂取しようとする人も多いのではないでしょうか。このような社会の動きを敏感に察知し対策することで、顧客満足度の向上と新たな顧客の獲得を目指しましょう。
この記事では「ヴィーガンとは」から「ヴィーガンの対応方法」について説明します。ヴィーガンについての理解を深め、適切な対処をしましょう。
Contents
ヴィーガンとは
肉や魚介類に加え、卵や乳製品、はちみつといった動物由来の食材を一切食べない人のことをヴィーガンと呼びます。基本的に植物由来の食材しか食べません。食事だけでなく衣類など生活用品も普及しており、近年では動物由来の素材を使わない衣類や化粧品も見かけるようになってきました。
ヴィーガンの市場規模
2017年に1.0%(120万人)だった日本におけるヴィーガン人口は2019年には5.7%(684万人)となりました。また、週に一回以上、意識的に動物性食品を減らす「フレキシタリアン」は全体の16.8%に達したと言われていて二年前から4.3ポイント上昇しています。2021年8月時点でベジタリアン・ヴィーガンレストランが2500店舗以上あるといわれており、2020年6月から350店舗以上増加しています。コロナ禍にもかかわらずレストランの対応数が増えているといえるでしょう。
ヴィーガンとベジタリアンの違い
ベジタリアンは、肉や魚といった「動物そのもの」だけを口にしません。一方、ヴィーガンは卵や乳製品、はちみつといった「動物から搾取したと考えられる食品」は一切口にしないという点が大きな違いです。
飲食店のヴィーガン対応
ヴィーガンやベジタリアンの人にどのように対応したらよいでしょうか。対応に必要な情報をまとめましたので、参考にしてください。
日本の飲食店のヴィーガン対応状況
観光庁が行ったアンケート調査によると、日本のヴィーガン対応は不十分であるという意見が寄せられています。その背景にはベジタリアン等に対応している飲食店が少ない点や店舗内外における表示が少なく対応しているかわからない点が挙げられました。
ヴィーガン対応で気をつけるべきポイント
気を付けるべきポイントを4つ紹介したので参考にしてください。
ヴィーガン対応に関する正しい知識を身につける
まずは、ヴィーガンについて、きちんと理解しどのように対処したらいいか理解しましょう。ベジタリアン等の類型、食事制限やニーズを正しく理解する必要があります。
利用できる食材・調味料を再確認
ヴィーガンの食事は食材だけでなく、調味料にまでこだわっています。
まずは食材についてです。さきほども説明したようにヴィーガンは卵や乳製品、はちみつといった「動物から搾取したと考えられる食品」は口にしません。
そのため、大豆や雑穀などで代替食品を作るなどといった対応方法があります。
つぎは調味料についてです。動物性食材を使用しないヴィーガンの食事には、調味料もやはり植物性由来のものを使用しましょう。皆様になじみのあるものを中心に紹介します。
- 昆布だし・椎茸だし
かつおだしはその名の通り魚がもとになっているため使うのは避けましょう。代用品として昆布だしや椎茸だしを使います。スーパーなどにも売っているので入手するのも簡単です。 - 野菜だし
チキンコンソメの代用品になります。キャベツや玉ねぎ、人参、セロリなどを使ってだしをとると動物性植物を一切使わず野菜だけでだしをとることが可能です。野菜スープの素もスーパーで買うことができますよ。 - メープルシロップ
はちみつの代用品になります。楓の木の樹液で出来ている天然の甘味料と言えるでしょう。風味も豊かで甘味も強いのでパンケーキやお菓子などにも使えますね。
一方、ヴィーガンでは使用しない調味料について説明します。
- はちみつ
はちみつは花の蜜を集めて出来ているので、植物性由来の食品と考えるのが一般的でしょう。しかし、蜂の体を介しているため、純粋な花の蜜とは言えないことから、ヴィーガンの人たちは口にしません。蜂と自然の営みに人間が介入することに問題があるということです。代用品としてメープルシロップなどが使われます。 - 白砂糖
意外にも、ヴィーガンの人は白砂糖も口にしません。一見、植物性の食品では?と思いますよね。白砂糖の原料はサトウキビですので、植物性です。しかし、白砂糖はさとうきびの茎の汁を絞り出して不純物を沈殿させ、上澄み液を採取し、煮詰めて結晶を作ります。この結晶が白砂糖になるのですが、精製過程で骨炭を使って不純物をろ過し、砂糖を漂白します。この骨炭というのが、動物の骨を炭状にしたものであるため、ヴィーガンの間では、動物性に分類されるのです。代用品として黒砂糖などが使われます。
ヴィーガン対応の表示・説明
ヴィーガン対応するにあたって口頭での説明が可能であることや、メニューに対応可能であることを記載する必要があります。32%のベジタリアンが、「使用する食材がメニューに明記されていないと入店しない」と回答しており、適切な対策をすることで大きな効果がもたらされることでしょう。また、「ベジタリアン等のサインが表示されていないと入店しない」と回答した人が31%という結果でした。サインというのは、認証マークのことです。認証マークを取得する場合、関係団体とコンタクトをとる必要があります。難易度が高い条件となりますが、着手できる部分からはじめてはいかかでしょうか。難易度が低い順から紹介します。
- 提供する商品を理解し、説明する。
まずはきちんと説明できるようになることから始めましょう。この料理にはどんな食材や調味料をつかっているのか、どのメニューがベジタリアン、ヴィーガン対応しているかなど問い合わせに対して正確に答えることができるようにしましょう。また、メニュー内にベジタリアン対応と文字で明記することも大切です。 - 店舗独自のVマークの実施
肉、魚、卵、乳製品などをイメージで表示し、〇✕などで使用不使用を視覚的に表現する店舗独自のVマークの実施をすることで、一目でこの料理はヴィーガン対応しているかどうかが分かります。店舗独自で作成、使用することができるので比較的取り掛かりやすいのではないでしょうか。 - 認証マークの取得
認証マークとは日本ベジタリアン協会による「JPVSレストラン認定」やべジプロジェクトジャパンによる「ヴィーガンベジタリアン対応Mark」が認証を与える公式に認められたVマークのことです。このような団体とコンタクトをとるのは少々手間がかかりますが、それに応じたメリットもあります。認証マークを取得することでヴィーガンの来店率は大幅に上昇するでしょう。
コンタミネーションを避ける
コンタミネーションとは厨房で調理をする際、調理器具や揚げ油などを介して動物性食品が意図せず混入してしまうことを指します。ヴィーガン対応食を調理する場合はコンタミネーションを避けるために、工程や配膳などを分ける必要があります。しかし完璧に実行するのは難しいでしょう。そのため、コンタミネーションが発生しないように最大限努力はするが、可能性はあるといった旨を説明するようにしましょう。
ヴィーガン対応方法の例
既存のメニューをヴィーガン対応に変更可能にする
今まであったメニューを動物性食材から植物性食材にかえることでヴィーガン対応のメニューを作ることができます。例えば、天ぷら料理を提供する場合に魚介類を野菜に変更したり、卵不使用の衣を使用したりなどが挙げられます。この際に通常メニューと同じ油で挙げないことや、出汁に動物性の食材が使用されていないことなどにも注意しなければなりません。
ヴィーガン対応の新メニューを開発する
新たにヴィーガン対応のメニューを作るという方法もあります。例えばハンバーガーを提供する店では、肉を大豆ミートなどの代用肉として、牛乳や卵不使用のバンズを使用することでヴィーガン対応メニューの作成が可能です。それに応じて、調味料も代替品を用意しましょう。
まとめ
- ベジタリアンは肉や魚といった「動物そのもの」だけを食べない
- ヴィーガンは卵や乳製品、はちみつといった「動物から搾取したと考えられる食品」は一切食べない
- 日本のベジタリアン、ヴィーガン対応はまだまだで正しい知識や調理法を知る必要がある
- ヴィーガン対応メニューの作成は、既存のメニューをアレンジする、新たにメニューを作るの2種類である
ここ数年でベジタリアン、ヴィーガンに関心を持つ人が増えてきました。コロナ禍であるにもかかわらず、対応店も増えてきています。肉や魚を使わないため、原価を抑えることもできるでしょう。今後さらに市場が拡大していくことが見込まれますので、対策を考えると良いかもしれません。