飲食店を成功に導くマガジン

飲食店開業には余力が必要

この記事を書いた人日本みらい税理士法人(みらい総研グループ)

まずは飲食業界を正しく理解しましょう

飲食業界の就業人口

宮城県における飲食業の就労人口は、建設業についで第2位の規模です。
以下は宮城県内で飲食業に従事するの就労者・事業所の割合です。

出展:平成28年経済センサス活動調査 産業別集計/e-statから抜粋(政府統計サイト)

飲食業の事業所数:10715/97479( 10.9%)、従業者数75901/1004797人(7.5%)
*()内の%は総数に対する割合

ちなみに就業人口が最も多いのは建設業です。建設業と飲食業の2業種で全就労人口の2割になり、宮城県内を代表する産業の一つと言えるでしょう。

飲食業界の特徴

飲食業の特徴としてよく言われるのが「開業し易く、廃業率が高い」ということです。同じくよく言われる特徴として「開業した飲食店の70%は3年以内に潰れる」とも言われます。実際に3年以内に70%が潰れるか否かは地域と年代によりばらつきが有りそうですが入れ替わりが激しいというのは仙台市街地を見ると感覚的にも理解できます。飲食店の経営は気候・立地・景況感に対し敏感に反応する業種です。

立地は去年と同じでも商圏内にマンションができると客層や単価が増加したり当日と次の日の気温差が2度違うと売れるメニューが変わるとさえ言われます。

立地も腕も良いのに数ヶ月で閉店することも…

それだけに飲食店経営に関する著書やコンサルティングサービスは非常に数が多くどれが正解かも分かりません。有名な店舗で修業した料理人が人通りの良い立地に店舗を出しても、数か月後には閉店…といった悲しい事案は日常的に起こります。

このブログの書いている私の父も料理人であり上記のようなパターンで1年で店をたたみました。

仙台駅前に在った著名なホテル(現在は閉店)で修業し、当時観光業で拡大をしていた会社の目玉事業として開業したレストランで料理長を務め、その後、飲食店を開業しました。

店を閉じた後も、宮城県内のホテル、上場企業の運営するレストランで料理長や責任者を歴任したことを考えると料理人としての実績や腕は良かったんだろうと思います。

今の私が、当時の父の飲食店創業を手伝っていたら…という「もしも」を想定して今回のブログを書きたいと思います。

開店する前から資金繰りを間違えていることが多い

「3ヶ月分の運転資金(広告費含む)を準備して開業する」

飲食店の創業において資金計画はこれに尽きます。
言葉では簡単ですが、飲食店の開業にはとにかく設備・店舗にお金が掛かります。

資金の余裕を作ることが難しい問題なのは承知の上です。しかし、あまりに多くの飲食店創業者が運転資金の余力が無いままにスタートしてしまいます。3ヶ月は贅沢としても1~2ヶ月でも余力を残してスタートして頂きたいのです。例えば自己資金200万、融資で400万。合計600万円の開業資金を得てスタートしても厨房機器は高額、更に飲食テナントの敷金で6~12か月となると1~3ヶ月の運転資金を残すには、立地、厨房機器、什器など色々と妥協が必要になります。

しかし、料理人として良い経歴を積んだ方ほどこの妥協が難しくなるのです。

開業直後に追加融資の手配をするか、開店準備段階で資金を残すべく妥協をするか…素晴らしい料理店を開くべく準備の最中でかつ、腕に自信の有る方にこの提案をするとなかなか聞き入れてもらえません。

そして、開店直前・直後のこの判断で3ヶ月~6か月後の運命が変わってくるのです。

何故これほどまでに運転資金の確保に拘るかと言いますと、飲食店の売上増減は非常に不安定だからです。ブログの最初に述べた通り「気候・立地・景況感に対し敏感に反応する業種」であり思った通り行かない事が非常に多いからです。思った通り行かなくとも固定費は出ていきます。また、広告費の確保についても同じです。思った通り集客ができない際には広告費が必要になります。

いくら料理が旨くても必要な人数の来客に繋がらければ商売として意味が有りません。開店数週間~1ヶ月程度はご祝儀的に身内が来店し、物珍しさで来店数が伸びることが多いのですが、来客の対応に追われ、徐々に減っていく売上の予兆に気付くことが多いのも事実です。口コミが広がるにも、SNSで拡散されるにしても時間が掛かります。

飲食店の繁盛には「旨い」が第一であることは間違いありません。しかし、自分の提供した「旨い」と商圏内の顧客の「旨い」を「一致」させなければなりません。その「一致」をさせるには飲食店側の歩み寄りやPRと結構な時間が必要であります。その時間を生み出すにはお金に余力が必要です。

動きやすい経営

上記で何故、飲食店創業直後に運転資金に余裕を持たせる必要が有るかの考えを書きました。

自分で考えたコンセプトが店舗の立地している商圏では合わなかったという事案はよくあることであるし、出店前に予想したコンセプトと商圏のニーズが完全に合致することは稀であると思います。

創業後に軌道修正をするための余裕を持てるか否かはとても重要です。

ここで言う余裕とは「資金」はもちろん、店舗敷地内の「空間的余裕」や経営者自身の「時間的余裕」も含まれます。最初からこれら「資金」「空間」「時間」の余裕が無くガチガチに固めてしまうと修正ができなくなってしまいます。

飲食店は気候・立地・景況感のような外的要因に加え、店舗入り口の位置や形状、間口の大きさ、看板の文字の色や大きさの違いといったソフト面の違いでも客入りが違うような業態です。入念な調査を踏まえて開業に踏み切ることは当然ですが、そこで固め切らず、修正を前提にした状態にする方が現実的ではないでしょうか。

飲食店経営者が「料理を作る・接客する」以外の部分にアクションを起こせるか?アクションを起こしやすい環境か?というのは、特に創業当初においては重要と思いますし、立派な厨房機器や高価な漆器を揃えるよりも重要だと思います。

まとめ

飲食店開業に必要な資金計画とは?

  • 【自己資金+借入金-開店準備に必要な投資=3ヶ月分の運転資金】となるようにする。
    やむを得ない場合は運転資金1~2ヶ月分でも可だが、追加融資など資金の追加ができる準備はしておく。
  • 動きやすい経営を目指す
  • 資金・店内の什器配置・導線など開店後にも変更がしやすいようにしておく

みらい総研グループのご紹介

税理士・社会保険労務士・行政書士・事務代行・経理代行・人材紹介・求人・不動産・保険・相続問題・相続税問題など企業・個人のお客様のあらゆる問題を解決するグループ企業。飲食店のクライアントも多く、幅広い分野でサポートを行っている。
お客様の問題に多数の視点で対応し、「みらい創研に頼めば全て解決!」のワンストップサービスを提供している。

みらい総研グループ公式サイトはこちら

この記事を書いた人日本みらい税理士法人(みらい総研グループ)

関連記事

税理士が解説!開業当初の融資は公庫から

飲食店のヴィーガン対応について|対応方法やポイントを解説

キャッシュレス決済を導入するメリット・デメリット

キャッシュレス決済を導入するメリット・デメリット

個人事業者よりも法人はメリットが多いか?

記事カテゴリ